水分摂取の声かけをしても拒否され、困っている
先輩に頼らず、上手に水分摂取を促せるような介護士になるには?
高齢者さんって、何だったら飲みやすいの?
本人の意思を尊重とか言いつつ、絶対飲ませてと上司から言われ矛盾を感じる!どうしても飲んでもらわないとダメ?
水分補給の拒否にお困りの新人介護士の方や、介護施設で働くのが初めての看護師さんに向けた記事です。
この記事を最後まで読むと、こんなことが分かります。
水分拒否に上手く対応できると、こんな素敵な職員さんを目指せます!
反対に、水分拒否に上手く対応できないと……
こんな辛い毎日は嫌ですよね!
だからこの記事を最後まで読んで、1日でも早く上手な声かけや対応を身につけ、自分の介護に自信をつけましょう。
この記事を書いているのはこんな人。
水分を拒否する高齢者への対応のコツ
水分補給の声かけをしても拒否されてしまう
それには理由があります。
水分補給を拒否する高齢者には、ちゃんと言い分があるからです。
本人が必要性を感じていないのに、介護者がすすめても飲みたくならないのは無理ないですよね。
利用者さんから拒否する理由を聞いたうえで、それに合った声かけや対応をすることが大事です。
水分拒否の理由別に、どんな声かけをすればいいか見ていきましょう!
トイレが近くなるのが嫌で水分を拒否
トイレが近くなるのを理由に水分を拒否される方には、こんな声かけがおすすめ。
高齢者にとって、トイレが近くなるとどんな困り事があるの?
つまり、若くて元気な人と違い、歩行や服の着脱が大変で体がキツくてイヤなんです。
その気持ちをしっかり受け止めることが大事です! その上で「でも、脱水は怖い!」と伝え、分かってもらえると良いですね。
例えば「トイレが近くなるのが嫌で、隠れ脱水になる人が増えてるってニュースで言っていましたよ」など、具体的に脱水の怖さを伝えてみるなど。
トイレが近くなることでの不安は、介護スタッフがいるから大丈夫と思っていただけることが大事です。
のどが渇いていないから水分を拒否
「のどが渇いていない、今は欲しくない」と水分を拒否される方には、こんな声かけがおすすめ。
本人が必要性を感じていないのに、介護者がすすめても飲みたくはなりませんよね。それなら必要性をわかってもらうことが大事。
相手が認知症の方でも、はなから「言っても分からない」と考えず、必要性を伝えてみましょう。
また「いっぺんに飲まなくていいんですよ。ひと口ずつ、のどを潤すように」と伝えると、口に含んでくださることも。なぜなら、一気飲みしなければいけないと思い込んでいる高齢者もいるからです。
むせるのが嫌で水分を拒否
むせるのが嫌で水分を拒否される場合は、こんな声かけがおすすめ。
のけぞった姿勢で食事や水分摂取をするとむせやすいからです。
誤って気管に入ってしまうと、誤嚥性肺炎や窒息を起こす危険性があります。むせにくい前傾姿勢に直して、少量ずつ水分を口に含んでもらうと◎。
一度むせを体験すると「あんな辛い思いはしたくない」と思うのも納得です。だからこそ、安心して飲める体験が大事。
飲み物にとろみをつけるとむせにくくなりますが、勝手におこなってはいけません。必ず上司に確認をする必要があります。
むせを予防するためには姿勢が大事だと伝え、毎回姿勢を直すところから始めましょう。
確かに、自分の言い分を聞いてもらえると安心する〜!
その後、水分摂取してもらえた時には、自分の声かけに自信が持てました!
水分摂取を促す上手な声かけ5選
水分の拒否がある高齢者に、どんな声かけをすれば良いのか分からない
それなら先輩の声かけをみて、上手くいった声かけを真似るべきです。
介護の先輩が使っている言葉は、きっと試行錯誤の末あみ出した究極の声かけだからです。
私が先輩から伝授された声かけがこちら!
「病院の先生」よりも「〇〇先生」がおすすめ。主治医の具体的な名前を言った方が、信ぴょう性が増して信じてもらいやすいです。
うちの看護師さんが…という時、看護師が近くにいれば「あの人です」と指差して、職員の顔を見てもらうと現実味が増して聞いてもらいやすいです!
高齢者の中には、医者や看護師の言うことなら聞く方もおられます。(※決して介護士さんを卑下しているわけではありません)
水分摂取の拒否に悩むよりも、上手くいった声かけや事例をマネる方が早いし確実です!
確かに、一人で悩んでいたら「分からないのに何で聞かないの!?」って逆に怒られちゃうし…
水分を拒否に対するマル秘テクニック
マニュアル通りにやってみたけど、やっぱり水分を拒否されます
全員に上手くいくわけではありませんが「こんな声かけで上手くいった!」という事例をご紹介します。
こんなやり取りして大丈夫!?と思うかも。でも介護は人と人とのコミュニケーション。デイサービスも入所施設も、利用者さんにとっては日々の暮らし。介護のマニュアルに載っていないただの日常会話や、冗談ぽいやり取りで上手くいくこともあるんです!
相手(利用者さん)をよく知り、介護職員と良い関係であることが大事です。
好みの飲み物が選択できると良い
水やお茶だと拒否されます
水分補給する際、水や麦茶だけではなく、色々な飲み物から好みの物を選べる方が良いです。
なぜなら、水やお茶は拒否されるけど甘いものなら飲める人もいるため。気分転換にもなります。
私が勤務していたデイサービスではこんなメニューがありました。
写真入りのメニュー表があるとなお良いかも。認知症で「コーヒーとはなんだっけ?」という方も、本当におられますからね。写真は美味しそうに撮るのがコツです!
たくさんの中から選べるのは素敵ですが、迷う時間がかかりすぎるのも問題。また、作るのにも時間がかかり大変です。業務に差し障りのないメニュー数を考えましょう。
もしかしたら、炭酸が好き!という高齢者さんもいるかも。これなら飲んでくれるかもという情報があれば、「サイダーを用意してもらえませんか?」など、上司に相談してみるのも良いですよ。
水分補給は【少量】【こまめに】
〇〇さん、お茶が全然減ってないですよ。しっかり飲んでくださーい
気持ちはわかりますが、水分補給は少しずつ、こまめに摂るように促しましょう。
なぜなら、飲み物をいっぺんに飲むのは大変だからです。
例えば、昼食が終わる頃になって「もうお腹いっぱい。お茶いらん」とまるまる残す方がおられます。
そうならないように、「まずお茶をひと口飲んでから食べ始めましょう」と声かけしたり、
食事の間に「いつもお茶が最後に残っちゃうから、ひと口飲んでおきましょ」とすすめると、最後に残らなくて良いです。
ちなみに、とある高齢者のデイサービスではこのようなタイミングで水分摂取をします。
普通のコップなら、だいたい120〜150ml入るでしょう。
ということは、このデイサービスなら600〜750ml飲めることになります。(内服なしの場合)
食事の汁物なども加えれば、合計で700〜850mlくらいになるでしょう。
高齢者が1日に必要な水分量は1000〜1500ml。だから、1日に必要な量の半分は摂取できる計算になります。
【水分拒否】本人の意思を尊重するべきじゃないの?
デイサービスで水分摂取しなかったらどうなる?
介護は本人の意思を尊重ってよく言うけど、上司から口酸っぱく水分を摂らせてって言われる。本人さんが拒否してるのに、無理に飲ませるみたいで心苦しい!
そこまでして飲ませないといけないの?
水分拒否されている方の意思を尊重するべきか、上司の指示に従うべきか、板挟みで困っているんですね。では、もう一度よく考えてみましょう。
高齢者が1日に必要な水分量は1000〜1500mlです。
コップ1杯が120〜150mlで、施設で5回水分補給するとします。食事の汁物なども加えれば、800mlくらいは摂取できる計算です(デイサービスを想定)。
でも、残りの700mlは自宅で飲む必要があります。
もしその方が一人暮らしで、誰も水分をすすめる人がいなかったら?
認知症で、自宅では全く水分をとっていなかったら?
朝と晩に分けて、それぞれ湯呑み3杯ずつ、合計6杯も家で飲めると思いますか?
そう考えると、施設での水分摂取って大事なんだなぁ!
自分の施設だとどのくらいか、一度チェックしてみるといいね。
水分が足りないと体はどうなる?
脱水症状とはどんな症状か、知っておきましょう!
高齢者は自分の症状に気づかなかったり、症状を上手く相手に伝えられなかったりします。
「本人は元気と言ってるけど、なんだかいつもと違うな」と周りが気が付くことが大切です。
おかしいなと感じたら、一度バイタル(体温・血圧など)を測ってみるのもおすすめです。
また、水分の飲み過ぎもよくないです。(糖分の摂りすぎや、水中毒の危険があるため)
「今日はやけに欲しがるなぁ」と、いつもと違うことに気付いたら周りに伝え情報共有し、上司に報告しておくことも大切です。
「いつもと違う」に気づくためには、「いつもの状態」を普段からよく観察しておくことが必要ですよ。
絶対にやってはいけないNG対応
〇〇さん、家じゃどうせ水分とってないから、デイでしっかり飲んでもらうことが大切だよね。
〇〇さん!ちゃんと水分とらなきゃダメですよ!!
水分摂取の重要性は分かってもらいたいところですが、水分を拒否される高齢者さんを叱ったり大声で注意したりしてはいけません。
なぜなら、水分を拒否することに本人なりの言い分があるからです。また、認知症の人は「水分とは?」「飲むって何?」と、どうすれば良いかわからない状態なのかも。
つまり、叱ってもお互いメリットがありません。むしろ、叱られた相手(介護者)に対する恐怖が残り、その後余計に介護拒否が進行する可能性が高くなるからです。
よくある質問
高齢者におすすめの飲み物や、NGってあるの?
カフェインが入っていないものがおすすめです。例えば麦茶など。
入浴後には、経口補水液をおすすめする施設もあります。
コーヒーや紅茶に含まれるカフェインには、排尿が多くなる作用があります。水分をとっているつもりが、出ていく方が多くなるのです。毎回コーヒーや紅茶ばかり提供するのは避けましょう。
NGな飲み物は「お酒」。お酒は水分にカウントしません。
また、「糖尿病のため〇〇禁止」「グレープフルーツジュース禁止」「〇〇は1日1杯まで」というように、個別に約束事がある場合も。
うっかり提供しないように、しっかり把握しておきましょう!
飲み物以外で工夫できることは?
食事にゼリーをつけてみては。
私が以前勤務していた施設では、アクエリアスのゼリーをタッパーにたくさん作って、入浴後などに飲んでいただいてました。
提供する時は、泡立て器でよく混ぜ、飲めるゼリーにしてツルっと飲んでもらっていましたよ(1杯100〜120mlくらいかと)
水分を拒否してるのかと思いきや、単に冷たい飲み物がイヤ!という高齢者さんもおられます。
温かいものに変えるだけで解決することも。試してみましょう!
自分で選んだ飲み物を飲んでくれない
本人さんがココアを選んだのに、飲んでくれないんです!なぜ?(ココアは一例です)
それ、本当は嫌いなのかも。
なぜなら、認知症などで自分が好きな飲み物もわからなくなることがあるからです。
私が勤めていたデイサービスで、おやつの時に毎回ココアを希望する認知症の方がおられました。
でもひと口飲んでイヤーな顔をして、飲むのをやめられます。「本当は嫌いなのかも」と思い、ミルクと砂糖を入れたコーヒーに変えてみると、すんなり飲まれました。何が何だかよく分からないまま、毎回ココアを選択されていたのでしょうね。
大事なのはここから。この情報を、他の職員と共有することです!
認知症でも会話が成立する方だと、ここまで分からなくなっているということに、まだ気づいていない職員さんもいます。
「自分がココアが良いって言ったんでしょ!飲んで!」なんて言ってませんよね?(涙)
まとめ
水分を拒否する高齢者さんには「拒否する理由・言い分」があります。
本人さんから拒否する理由を聞いたうえで、それに合った声かけや対応をすることが大事です。
マネしてOK!上手な声かけ5選
水分拒否にはこんな工夫をしてみましょう!
怒るのは絶対NG!介護者に恐怖が残り、その後余計に介護拒否が進行する可能性があるから
高齢者(利用者)さんが要らないと言っているのに、飲んでくださいとお願いする感じになるわけですから、その方との関係性も大事になります。
コミュニケーションの悩みや相談事なども無料で受け付けていますので、お気軽にお問い合わせフォームからお寄せください(全てのお悩み・ご相談を解決できるわけではありませんのでご了承ください)